40代サロンオーナーに広がる“気力と体力のズレ問題”とは
欧米の美容業界で最近取り上げられているキーワードに「Energy Gap(エナジーギャップ)」があります。直訳すれば“エネルギーのすき間”。40代前後の女性サロンオーナーが、かつての自分なら無理なくできていた働き方を続けられず、そのズレに戸惑う様子を表す言葉です。
スキルも経験ももっとも成熟している年代なのに、体力だけが追いつかない。そんな現象が海外では“あるある”として語られるようになっています。
“できる気持ち”と“動ける体”の差が開いていく
海外メディアのインタビューでは、多くのオーナーが「頭の中では今日も完璧に動けるはずと思っているのに、体がついてこなくて落ち込む」と話しています。
やるべき段取りや施術の流れは熟知している。接客も、技術も、ハンドリングも昔より成長している。むしろ気力は十分にあるのに、一日が終わるころには“やり切れなかった感”が残る──このギャップに悩む声が増えているそうです。
これが「Energy Gap」と呼ばれる現象で、特に立ち仕事・長時間の集中を要するサロン業では顕著に現れています。
営業時間を短縮したオーナーたちの声
アメリカ、カナダ、ドイツの小規模サロンでは、営業時間の見直しがトレンドになりつつあります。
「8時間みっちり働けたのは30代までだった」と言うオーナーも多く、午後の後半になると集中力が落ち、ミスが増えやすくなるという声も。
そのため、
- 閉店時刻を1時間早める
- 週に1日は“予約を詰めない日”を作る
- 体への負担が大きいメニューを減らす
といった調整が、無理のない働き方として受け入れられるようになっています。
最初は「時間を短くしたら売上が落ちるのでは」と不安に思うオーナーも、結果として客単価やリピート率が伸び、負担が軽くなったことでサービスの質が安定したという例が報告されています。
日本のサロンオーナーにも共通するテーマ
40代の女性が「気力はあるのに体力が足りない」と感じる背景には、仕事の質が上がったからこそ抱えるプレッシャーがあります。
若いころのような勢いではなくても、経験があるぶん接客も技術も“もっとできる自分”を知っている。だからこそ、体が追いつかない日に落ち込んでしまう。
これは日本のサロンオーナーにも強く共通する部分です。
メニューの再設計という選択肢
海外ではこのエナジーギャップを機に、メニューを全面的に見直す動きも出ています。
時間のかかる長時間メニューを減らし、代わりに
“得意なメニューを短時間で提供する”
方向にシフトするサロンが増えてきました。
実はこの流れ、個人サロンにとっては大きな追い風です。
- 時間当たりの負担が軽くなる
- グルーミングのように流れのあるメニューがスムーズになる
- 単価調整がしやすくなる
など、「体力を温存しながら質を保つ」働き方へ自然に移行できます。
“今の体力”で組み直した働き方が未来の基準になる
エナジーギャップはネガティブなものとして語られがちですが、海外のサロンオーナーたちは「働き方を整えるタイミングを教えてくれるサイン」と前向きに捉えています。
今の体力に合わせて営業時間やメニューを組み直すことは、妥協ではなく“次の10年の土台づくり”。
40代は、サロンオーナーとしての経験値をもっとも活かしやすい年代でもあります。
無理のない働き方に変えていくことで、技術もサービスもむしろ安定し、長く続けられる形へと育っていく──海外の例は、そのことを静かに伝えています。

